第五回は“ケガ”に関する“へぇ~”をお届けします.


 ひとことでケガといっても,色んなケガがありますよね.カッターで指を切った・・転んで膝をすりむいた・・お湯をこぼしてやけどした・・ケガは色んな場面で起こりえます.今回の“へぇ~”では,ケガによって皮膚が傷ついてえぐれた状態(皮膚潰瘍・皮膚びらん)から,皮膚はどうやって治っていくのかを分かりやすくお話します.これが分かればおのずとケガに対する正しい対処法・治療法がご理解いただけると思います.

<ケガはどうやって治るの??>
 ケガが治るには主に三つの過程を踏みます.炎症期・増殖期・成熟期です.
炎症期はケガをした直後から1~2日後の期間のことで,ケガをした場所に悪さをしようとするバイ菌と戦うために,ケガの周りの正常な皮膚からバイ菌と戦う細胞(主に好中球)がどんどん集まってきます.集まってきた細胞がバイ菌と戦っている状態を“炎症”と言い,ケガをしたところが赤くなったり熱をもったり痛くなったりします.
続いて増殖期に入ります.ケガをしてから2~7日後の期間のことで,炎症期に戦ったバイ菌の残骸やケガで痛んだ組織を食べて取り除く細胞(主に組織球)や,ケガをして痛んだところの下地を整える細胞(主に線維芽細胞)が集まってきます.えぐれていたケガが平坦になるように盛り上がってきます.
最後に成熟期を迎えます.ケガをしてから7~14日後の期間のことで,盛り上がってきたところに元通りの皮膚が覆うように再生されていきます.

<ケガしたらどうすればいいの??>
 真皮内にとどまるケガであれば,実は放っておいても自然に治ります.人間を始め生物の自然治癒能力の真骨頂です.昔よくおばあちゃんに「ツバをつけときなさい!」と言われたことが記憶に残っているのでは?ある意味正しいことを言っていたのです.しかし,治るのに要する時間が長くなるとバイ菌が悪さをする機会も増え,きずあとは残りやすくなります.ケガが少しでも早く治るように自然治癒能力をサポートするのが,いわゆるケガの治療になるのです.つまり,ケガの各時期に応じて治療内容がかわってくるのもご理解いただけてきたかと思います.では,具体的にどうしていくかというと・・・

*炎症期(直後~約1, 2日後)
よく「怖かったので・・痛かったので・・バイ菌がつくので洗いませんでした.ずっとバンドエイドを貼ってました.」というかたがいますが,これは大きな間違いです!バイ菌の量を少しでも減らせばいいので,石けんを使ってしっかりケガのところを洗いましょう.また「バイ菌を殺すために消毒しました」というかたがいますが,消毒はケガを治そうと集まってきた細胞も痛めつけてしまうし,またケガのところだけ消毒してもすぐ脇の皮膚からバイ菌は寄ってきてしまうので意味がありません.石けんを使ってしっかり洗えればケガに悪さをしなくなるぐらいのバイ菌の量に減らすことができます.しっかり洗った後に炎症を抑える軟膏や抗生剤を含んだ軟膏を塗って治療します.
*増殖期(約2~7日後)
 バイ菌が増えないように気をつけながら,ケガしたところの下地を整える(肉芽形成)時期になります.毎日石けんを使って傷口を洗い,肉芽形成を進める軟膏を塗って治療します.どの時期にも言えることですが,前日塗った軟膏をしっかり洗い落とさないと,洗い残した軟膏はバイ菌のエサになってしまうので,何度も言いますが傷口はしっかり洗いましょう.しかし,洗うと血が出てくるので洗いたくないというかたが時折見受けられます.ケガが治っていくのに良い環境は,パッと見て傷口が赤い肉芽組織で覆われている状態なのです.この“赤い”は・・ずばり血の色です.“傷口が赤い”=“血管が多く通っている”=“この組織に栄養分が豊富に行き届いている”=“ケガがどんどん治る”となります.洗った時に出る出血は程度にもよりますが,ほとんどの場合はしばらく押さえていれば止まりますので,心配せず毎日しっかり洗いましょう.
*成熟期(約7~14日後)
 ケガしたところの下地が整ってくる(肉芽形成が進む)と,皮膚が周囲から再生されて傷口が治っていきます.肉芽形成を進める軟膏や,血を通わせやすくする軟膏,皮膚を保護する軟膏などを塗って治療します.

<ケガしたところの“きずあと”は残りますか??>
 きずあとの残り方は,ケガの度合いにもよりますが,多くの場合はケガが治った後のスキンケアによって大きく左右されます.きずあとに外からの刺激が加わると色が濃くなったり,逆に真っ白く抜け落ちたり,またきずあとに沿って盛り上がってきたり(ケロイド・肥厚性瘢痕)することがあります.つまり“外からの刺激をできるだけ防ぐこと”=“スキンケア”が大事になります.外からの刺激は,例えば着ている服だったり,自分の髪の毛先だったり,直接触れるものだけではなく日頃浴びている太陽の光(紫外線)も含まれます.なので,手っ取り早いスキンケアとして,できるだけ保湿剤を塗って皮膚を保護し,また日焼け止めを塗って紫外線を防ぐことが大事です.

 ケガは赤ちゃんからおじいさん・おばあさんに至るまでいつでも自分に降りかかる可能性があります.特にこの季節は運動会の練習などで,子供たちもケガをしやすい時期です.少しでも早く状況に適した治療をすることで,ケガが早く治るだけでなく,できるだけ目立たないきずあとにすることにもつながります.たいしたケガではないから・・と遠慮する必要はありません.少しでもケガの対応にお悩みの際は,皮膚科専門医への受診をお勧めします.お気軽に当院へご相談ください.